ご挨拶

第34回日本産業衛生学会全国協議会
企画運営委員長
宮本 俊明(日本製鉄株式会社東日本製鉄所 統括産業医)
 第 34 回日本産業衛生学会全国協議会を、令和6年(2024年)10月3日(木)~5日(土)の3日間、房総丘陵に位置する「かずさアカデミアホール」にて開催することとなりました。県庁所在地ではない地方都市での開催になりますが、改めてこのような機会を与えてくださった方々に心より感謝申し上げます。
 さて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が第5類感染症となり、予防対策が各自に任されることになりましたが、今回の世界同時パンデミックからの3年少々の間は、従前の感染症対策の想像を超えた部分が多くありました。まさに一歩どころか一寸先は闇ともいえる状況でした。多くの産業保健職がご活躍になったことと思います。
 また、化学物質に係る自律的管理という新たな展開は、ばく露を最小化することでリスク低減を目指すということで、従来の健康影響が出てしまった者を早期発見するという考え方とは一線を画す予防重視の望ましい方向性になります。対応すべき化学物質の数は大幅に増えるものの、リスクアセスメントからの対策に大きな変わりはありません。個々の作業でのばく露を最小限度にする個別対策と、「ばく露が最小限度にできていない場合に健診実施」となり、健診の位置づけは大きく変わりますが、その要否判断や実施期間などは産業保健職の知見が求められることになります。
 過労死等の防止対策推進は国民の願いであり、メンタルヘルス対策とともに産業保健のなかでの重要性は高いままであり、心理職も産業保健専門職として活躍することが増えてきました。さらに、毎年のように発生する自然災害時の関係職場での産業保健の面からの支援も重要となっています。最近の産業保健の現場でもウェアラブル端末、VR(バーチャル・リアリティ)やAI等の活用が増えており、熱中症予防対策や事故防止教育や健診判定補助などにも積極的に活用されてきており、今後は治療と仕事の両立支援にも活用が予想されるなど、従来からの知見を要する点で温故知新といえます。
 このように、変化が著しい産業保健の世界において、専門職として一歩先を見据えて、例え不明瞭な面があっても最適解を追求する、実践的で実効的な産業保健を切り拓く人材となるべく、切磋琢磨する場になることを願って今回のテーマ「一歩先の産業保健を切り拓け! ~過去から未来への懸け橋に~」としました。これまでの産業保健100年弱の歴史から学び、そこから未来につなぐ懸け橋になりたいとの思いも込めてのものです。
 千葉県は戦後間もなく東京湾に面した京葉地区の臨海部開発が始まり内房地区に展開され、鉄鋼業や石油化学工業や機械工業などが進出しており、現在ではアクアライン効果もあって運送や倉庫などの物流業や小売業の拠点も多く、成田空港やテーマパーク、醤油醸造や酒造や漁港もあり、多彩な産業があります。昭和34(1959)年には現在まで続く千葉県産業衛生協議会が発足しています。今回は古くから「上総(かずさ)」と称された当地域の名を冠した会場での開催であり、木更津駅及びバスターミナルと会場を専用バスで結びます。オークラホテルでの懇親会では、東京湾に面した内房から田園と丘陵を挟んで太平洋に面した外房に至る地域の特徴を生かしたおもてなしをさせていただく予定です。
 多くの方のご来訪をお待ちしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2023年11月吉日